てんかんと聞くと、いきなり失神して痙攣するというイメージを持つ人も多いでしょうが、これはあくまでも数多くあるてんかんの一つの症状に過ぎません。
てんかんには実に多種多様な症状が存在し、それぞれの原因や特徴も異なります。
なぜ発作が起きてしまうのかすら明確に解明されてはおらず、ましてや患者以外はどんな病気なのか見当もつかないという人も多いでしょう。
そんなてんかんの中でも、比較的ポピュラーな種類として症候性てんかんが挙げられます。
既に罹患している人も多いですし、現在は発症していない人でも将来的に罹患する可能性は十分にあります。
万が一発作を起こしている人を発見した時や自分が罹患した時に備えて、正しい知識を持っておくようにしましょう。

症候性てんかんの原因とは?

脳内に走る電気信号てんかんと言えば、脳になんらかの障害が生じることで電気信号が体に正しく伝わらなくなり、様々な症状を引き起こしてしまう病気です。
そのてんかんの中でも、症候性てんかんは過去に罹患した病気が原因となって、脳や神経などがダメージを受けている場合に発症します。
後天的な病気の影響で異常が生じることが多いですが、中には生まれる前の先天的な異常によって発症することもあります。
てんかんは決して珍しい病気ではなく、実はてんかん患者は1,000人あたり約5人から10人の割合で患者がいるというごくありふれた病気です。
日本の人口の約0.5%から1%は何らかのてんかん症状を発症しているということになり、身近に患者がいても何らおかしくありません。
特に3歳以下の乳幼児期の発症が最も多く、その次に18歳以下の思春期、その後に成人期という順番で発症時期は多くなっています。
最近では高齢化が進んでいることもあり、様々な器官が衰える高齢者にも患者が増えているという特徴があります。
症候性てんかんだと診断されるのは、異常が起きた原因が比較的はっきりしている場合です。
基礎的な脳疾患や損傷など明らかな原因がある場合、それによって脳の中にある特定の部位に電気信号の過剰な放電が起きます。
すると身体の様々な部位が正常な指令を受け取れなくなり、異常な発作がおきてしまいます。
基礎的な脳疾患や損傷とは、脳腫瘍や髄膜炎、頭に深刻なケガを負った場合や出産時のトラブルで低酸素脳症になった場合などです。
確定診断は検査によって行われますが、医師の問診でこれまでに罹患したことのある病気や小児期の成長過程、運動能力や知的能力といった様々な要素も、診断に大きく影響します。
このため、病院で診察を受ける場合には本人だけが行くのではなく、家族や親など小児期の様子を知っている人も一緒に行った方が効率的です。
症候性てんかんは先天的な異常が原因になっていることもあるため、乳幼児期や小児期から症状が現れることがあります。
このような場合、共通する成長上の特徴や効き目が高い治療薬、手術の有効性などのデータがある程度揃っているため、大人になってから発症するより予後は良いと言えます。
もちろん個人差があるので、小児期だから絶対に改善する、大人だから改善しないとは言い切れません。
あくまでも可能性が高いという理解に留めておき、患者に合った治療を行っていく必要があります。
乳幼児期や小児期では先天的な原因がほとんどですが、成人してから発症した場合は事故によって脳が損傷してしまったり、神経系統の病気や脳腫瘍、髄膜炎にかかるなどして脳がダメージを受けるといった原因が考えられます。
髄膜炎は小さな子供がかかることの多い病気ですが、大人でも全く髄膜炎を罹患しないというわけではありません。

高齢者になりてんかんを発症することもある

この他、年齢を重ねると血管が脆くなって損傷しやすいため、高齢者も脳血管性の病気などによって症候性てんかんになることもあります。
頭部のケガや髄膜炎、脳腫瘍などで一時的に痙攣などの発作が出ることもありますが、一過性でその後継続が見られなければ症候性てんかんとは診断されません。
このような場合は急性症候性発作という病名がつき、てんかんとは異なる症状と判断されるので注意しておきましょう。
また、てんかんは基本的に治療薬の使用によってある程度発作を予防できるのですが、症候性てんかんの場合は薬で完全に発作を予防するのは難しいという特徴があります。
その代わり、手術によって脳腫瘍など異常を引き起こしている部位を治療すると症状が治まるケースが多いです。
年齢や症状の重さなどによって手術が適しているかどうかを判断されるので、誰でも手術を受けられるというわけではありません。
特に脳腫瘍はできている場所によって手術が難しいこともあるので、医師とよく相談する必要があります。

症候性てんかんの症状はどのように現れる?

てんかんの症状が出た男性症候性てんかんは、成人の場合ほとんどのケースで脳の一部分にだけ異常が生じています。
全体に異常が発生するタイプよりも比較的症状は限定的ですが、だからと言って油断はできません。
脳のどこでも部分的な異常が生じる可能性はあり、その場所によっては非常に重い症状が現れることもあります。
電気放電が異常に活性化する部位によって、症状は主に4つのタイプに分けることができます。

最も異常が発生する頻度が高いのは、運動能力を司る部位です。
身体を動かすことをコントロールしている部位が異常に活動してしまうため、発作も身体の動きを伴う運動発作が多いです。
何の前触れもなく突然発作が起きて突然終わるのが特徴で、急に大声を出して止まらなくなったりうめき声を上げ続ける、両手や両足を激しく振り回すといった目立つ行動が多いです。
睡眠中など無意識下で発生することも多く、一緒に生活している家族は驚かされることもよくあります。

感覚をコントロールする部位で異常が起きた場合は、感覚発作という症状が現れます。
症状が起きる前には胃のあたりに不快感を感じるなどの前兆が出ることもあり、慣れてくれば発作にあらかじめ対処することもできます。
具体的な症状としては、意識が無いのにまるで起きている時のように様々な動作を行ったり、発作が治まったあとにも感覚が戻らず朦朧とする、逆に全ての動作がストップして一点を見つめたまま動かなくなる等です。

感情などを司る部位の場合、自律神経発作や精神発作などが現れます。
これらの発作には意識要害が併発することもあり、意識混濁や夢遊病のような状態、理由もなく恐怖に慄いたり認知障害などの症状を示します。
自律神経発作や精神発作は複雑部分発作とも呼ばれており、治療に対して反応があまり得られません。
こういった様々な部位で異常が起きることで、それぞれに応じた症状が現れます。
部分的な異常で収まれば良いのですが、あまりに電気信号の放電が活性化しすぎると、異常が一定の部位に留まらず全体に広がってしまうこともあります。
すると特定の症状で終わらず、全身に痙攣が起きる二次的発作を引き起こすことも珍しくありません。
症候性てんかんでは部分発作がほとんどですが、このような過程で全身症状が起きることもあると覚えておいてください。
成人の場合は上述したように部分的な発作が起きることが多いのですが、乳幼児期や小児期では全体的な発作が起きることも多いです。
これは症候性全般てんかんと呼ばれ、以下の4種類に分けられます。

ウエスト症候群
ウエスト症候群は生後3ヶ月から10ヶ月ほどの乳児に発症するケースが多く、頭や手足などに数秒間だけ力が異常に入るような動作を繰り返します。
特に男の子に発症することが多く、起床直後に頻発するといった点が特徴です。
運動能力だけでなく知能にも発達障害が見られ、脳波を計測すると特徴的な動きが見られる難治性のてんかんとなっています。
レノックスガストー症候群
レノックスガストー症候群は2歳から8歳頃の小児期に発症する症状で、ウエスト症候群からの移行と考えられます。
身体に力が入って硬直したり、逆に脱力や失神など様々な症状が起きるのが特徴です。
運動能力と合わせて知能にも遅れが見られ、早期の治療が必要になります。
ミオクロニー失立発作
ミオクロニー失立発作は2歳から5歳頃までに見られるもので、急に手足の力が抜け、崩れ落ちるように失神したり熱性痙攣を併発するのが主な症状です。
ミクオロニー欠神
ミクオロニー欠神は7歳以前に発症するもので、女の子よりも男の子に多く見られ、数十秒間にわたって意識を突然失ってしまう発作が繰り返し起きます。
失神して倒れるようなことはなく、一見するとぼんやりしているだけのように見えるので発見が難しく、治療も遅れがちです。
放置していると知能が低下したり、他の発作を引き起こすこともあるので注意が必要です。

症候性てんかんは検査で診断できます

症候性てんかんの場合は脳に特徴的な異常な電気刺激が起きているため、脳波を検査することで発見することができます。
本当に電気信号の過剰放電によって起きている症状なのかを判断するために、他の病気の可能性を探ろうと血液検査が行われることも珍しくありません。
まずは神経学的な診察によって異常が脳のどこで起きているかを診断し、脳波を測定して異常が起きているポイントを絞り込みます。
ある程度場所が分かると、MRIなどを用いて画像診断を行っていきます。
これはどこに病変があるのかということだけでなく、脳腫瘍なのか奇形なのか、異常の性質までチェックして正しい治療法を導き出すためです。
症候性てんかんの診断にはCTよりもMRIの方が有効性が高いとされていますが、身体が成長しきった成人でないと安易に受けられないのが難点です。
乳幼児や小児はよほど症状が重くないとMRIを使って調べてもらえないこともあるので、MRI検査を希望したからと言って全員が受けられるわけではありません。
また、他の病気ではないということを確定診断するためにも、脳波の計測は必要不可欠です。
てんかん患者は特徴的な脳波が見られるので、他の脳疾患とすぐに見分けることができます。
ただ、日本では残念ながら成人の症候性てんかんの専門知識を持った医師が少なく、小児期から担当してくれていた医師が成人後も引き続き診察してくれるというケースも珍しくありません。
てんかんは症状の現れ方などに個人差が非常に大きいため、本来であれば高い知識と経験を持つ専門医に継続して診察してもらうことが必要です。
長期的な治療が必要になるので、できれば検査から治療まで長い目で担当してくれる医師や病院を探すようにしましょう。
脳波やMRIなど代表的な検査以外に、最近では血液を利用して検査する方法も普及しています。
痙攣や失神などの症状が現れる病気はてんかん以外にも存在しており、他の病気を原因として起きる発作は急性症候性発作と言って一般的な症候性てんかんとは区別して診断することが求められています。
感染症などを原因とするケースもあり、てんかんのように長期間にわたって症状を繰り返すのではなく発作が1回きりということも多いです。
こういった急性症候性発作の可能性も考え、検査の際には血液検査や尿検査が行われることがあります。
感染症にかかっている場合は血液などに細菌が検出されたり炎症反応が出ますし、代謝異常などが起きている場合は血糖や電解質、ピルビン酸などの数値に異常が現れるので区別がつきます。
脳血管障害を起こしている場合は凝固検査、薬剤による発作の場合は血中の成分濃度などを知ることができ、これらに該当する場合は症候性てんかんとは診断されません。
逆に、血液検査などでこういった急性症候性発作の可能性が否定されれば、症候性てんかんであることがより確実になります。

てんかんの血液検査は確定診断以外の目的もある

血液検査は確定診断以外にも目的があります。
それは、てんかんの治療に利用される薬の副作用が起きていないかを確認するためです。
発作を抑えるために利用される抗てんかん薬は10年以上という長い期間服用し続けることもあり、知らないうちに体に負担がかかって副作用を生じていることもあります。
自覚症状がなくても副作用が起きている可能性もあるので、副作用が起きやすい貧血や肝機能などの数値をチェックすることが重要です。
さらに、治療薬の投与量が適切なのかを調べるため、有効成分の血中濃度をチェックする必要もあります。
効果的な治療のためには過不足なく適量を投与することが望ましいので、血液検査の結果は非常に重要です。
このように、症候性てんかんは様々な検査によって診断を下すことができます。
脳波やMRIが一般的ですが、他の病気も疑われる場合は血液検査が行われることもあると覚えておきましょう。